はじめに

二級建築士の木造製図試験において、多くの受験生がエスキスや伏図で時間を奪われるのが「耐力壁(たいりょくへき)」「火打ち梁(ひうちばり)」の配置です。

「とりあえず空いている壁に入れておこう」「角に斜めの線を引いておけば安全だろう」

もしこんな風に適当に配置しているなら、本番で「構造計画の不備」として大きな減点、最悪の場合は一発不合格になるリスクがあります。5時間という過酷な試験の中で、複雑な構造計算をしている時間はありません。

この記事では、試験本番で迷わず機械的に配置を完了させるための「目安の数」と「絶対ルール」、「区画テクニック」を分かりやすく解説します。

第1部:耐力壁(たいりょくへき)の配置ルール

耐力壁の配置で最も警戒すべきなのは「偏心(へんしん=ねじれ)」です。片側に壁が偏っていたり、上下階の位置がバラバラ(直下率が悪い)だったりすると致命的な減点になります。

ズバリ!耐力壁は「何カ所」入れればいいの?

近年の試験の標準ボリュームである「延べ面積150㎡〜200㎡程度(例:1階100㎡・2階80㎡)」の場合、平面図のマス目(910mmグリッド)を使って、以下の「マーク(◁)の数」をクリアしていれば法的な必要壁量を満たすことができます。

  • 1階: X方向(東西)、Y方向(南北)それぞれ12マス 程度以上
  • 2階: X方向(東西)、Y方向(南北)それぞれ 8マス 程度以上
【なぜこの数になるの?(壁倍率の根拠)】
仮に、耐力壁を「筋交い等(壁倍率3.0)」、1階の地震力に対する軸組長さを29cm/㎡、1階を100㎡として計画した場合、
法的に必要な壁の長さは「100㎡×29cm/㎡=29m」です。余裕を見た壁倍率3.0の場合、1マス(0.91m)あたりの効力は2.73mになります。
つまり、29m ÷ 2.73m = 約10.6マス。よって、少し余裕を見て偶数の数であるタテヨコそれぞれ12マス以上入れておけば、法基準をクリアできる計算になります。※耐力壁の倍率が1~5のどれなのか、風圧力による軸組長さの計算結果等により数値は変わりますので、上記の計算はあくまで目安になります。

【鉄則】迷わない「4つの絶対ポジション」と手順

試験本番では「外側から内側へ」の順番で、以下の4箇所を優先して耐力壁で固めていきます。

  1. 建物の四隅(外周の角): 最もねじれの力がかかる最重要ポイント。必ず配置します。
  2. 大きな開口部の両脇: 外側を優先的に、掃き出し窓や玄関ドアなどの弱点を両脇から固めます。
  3. 火打ち梁で囲われている範囲: 内部の耐力壁は火打ち梁で囲われている範囲を優先して配置します。
  4. 1階と2階で壁が通っている箇所:1階と2階が連動して力が伝わるように、なるべく位置が揃っていることが望ましい。(最低でも50〜60%程度の壁は、上下階で位置を揃える「直下率」を意識すると減点されにくくなるらしい)
  5. 「四分割法」で最終バランスを確認する

※四分割法(よんぶんかつほう)とは?
建物をタテヨコそれぞれ4等分し、両端の1/4のエリアにある壁の量を比較する方法です。「少ない方の壁量 ÷ 多い方の壁量 = 0.5以上」になっていればOK。足りないエリアに壁を追加してバランスを整えます。それぞれ縦方向の壁同士、横方向の壁同士を比較します。
※壁量充足率を計算して東西南北がそれぞれ1を超えるのであれば、上記比率が0.5以上であることを確かめる必要はありませんが、壁量充足率を計算で確かめるのも時間がかかるので、四分割法にて壁量を比較しておいた方が良いと思われます。

⚠️ 注意!「L字型」プランの落とし穴
建物をL字型にすると、欠けている側の壁量が極端に減るため、四分割法で「0.5以上」をクリアするのが難しくなる場合があります。減点リスクを避けるため、試験では「総2階建ての長方形(整形)」でプランニングするのが望ましいです。とはいえ、難しい場合も多々あるとは思います。

第2部:火打ち梁(ひうちばり)の配置ルール

2階床伏図や小屋伏図に登場する火打ち梁。これは地震や台風の横揺れを受けた際に、建物が「ひし形に歪む(水平面が変形する)」のを防ぐ重要な補強材です。

フラット35基準!区画は「可能な限り16㎡以下」が望ましい

火打ち梁は、まずは「建物の外周の四隅(出隅)」に必ず入れます。しかし、大きな空間では外周だけでは真ん中がたわんでしまいます。

そこで建物の内部を細かくブロック分けしていくのですが、最も安全で望ましい配置の基準となるのが、住宅金融支援機構が定める「フラット35 木造住宅工事仕様書」のルールです。

フラット35仕様書には「火打材は、間隔4m以内ごとに設けること」と規定されています。これを製図のマス目(910mm)に換算すると以下のようになります。

  • 4マス = 3.64m(4mルールをクリア!)
  • 5マス = 4.55m(4mルールをオーバー)

つまり、建物を「4マス×4マス(約13.2㎡)」のブロックに区画し、その交点に火打ち梁を入れていくのが最も安全な正解となります。製図試験においても、「可能な限り16㎡(4マス×4マス程度)以下の区画で火打ち梁を入れる」のが最も望ましい構造計画と言えます。

大きな空間で「16㎡」を超えてしまう場合は?

基本は16㎡以下ですが、LDKなど柱のない大きな空間を作った場合、どうしても「4マス×4マス」で区画できない(区画の交点に柱や梁がない)ケースが出てきます。

その場合の救済措置として、資格学校のテキスト等で教えられるのが「最大でも4P×8P(約30㎡)程度までは許容される」というテクニックです。

💡 コラム:なぜ資格学校は「4P×8P」を許容するのか?
木造の構造計算ルールにおいて、耐力壁線の間隔の限界は「8m以下」、そして水平構面(床)がたわまずに耐えられる面積の限界は「約40㎡」とされています。
「4P×8P(3.64m×7.28m=約26.5㎡)」であれば、ギリギリこの限界基準内に収まるため、製図試験の解答としては成立します。
しかし、これはあくまで「許容される最大サイズ」です。図面全体を4P×8Pにしてしまうのではなく、「基本は可能な限り16㎡(4マス×4マス)以下で細かく固め、どうしても無理な大空間だけ4P×8Pまでに抑える」という意識を持つことが、合格への確実な道となります。

絶対にやってはいけない!火打ち梁の「2つのNG」

  • NG1:階段の内部に入れてしまう
    階段の内側には基本的に火打ち梁を入れることができません。
  • NG2:平屋だからといって数を減らす
    「上に2階がないから」と平屋の屋根(小屋組)の火打ち梁を減らしてはいけません。屋根が受ける風圧や地震力に耐えるため、平屋の小屋伏図でも2階建てと同じように「4P×4~8P」などの区画ごとにしっかり配置します。

まとめ

二級建築士の木造製図試験において、構造の配置は「センス」ではなく「ルール(法律と計算の裏付け)」です。

  1. 耐力壁は四隅(外周の角)を固め、なるべく端に耐力壁を入れるようにして、X方向(東西)、Y方向(南北)それぞれ12マス 程度以上を目指す。
  2. 四分割法で「0.5以上」のバランスを意識する。
  3. 火打ち梁は「可能な限り16㎡(4マス×4マス)以下」の区画ごとに配置し、最大でも4P×8Pまでに抑える。
  4. 階段などの開口部内には火打ち梁を入れない。

これらの鉄則を守り、機械的に作業をこなすことで、エスキスと作図のスピードは劇的に上がります。構造計画の迷いをなくし、余裕を持って試験合格を勝ち取りましょう!

※令和8年度に製図試験を受験予定です。自分用にまとめてみましたが、誤りなどがありましたら教えてください。