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建築設備士一次試験の合格率と難易度について
建築設備士の一次試験の合格率はおおよそ3割です。詳細は試験元のデータをご参照ください。
これだけ聞くと「3人に1人受かるんだから、比較的楽勝な試験だな」と思う人がいるかもしれません。実際私もそう思っていましたが、二つ前提条件に落とし穴があります。
一つ目は、受験資格が必要なために受験者の質が高いことです。指定学科を卒業した大卒者や1級建築士・1級電気工事施工管理技士・1級管工事施工管理技士・電気主任技術者等の資格を持つ者でも2年間の実務経験が必要です。
二つ目は、受験費用が高額なことです。36,300円(+ネット受付事務手数料)の受験費用に加え、最低限必要な法令集と問題集 合わせて8,800円、試験会場が少ないために試験を受けるための交通費と宿泊代、さらに二次試験合格のためにほぼ必須と思われる「日本設備設計事務所協会連合会」等が主催する講習会の受講費用25,000円を考慮すると、少なく見積もっても70,000~100,000円(試験会場から自宅までの距離により値段が変動します)程度の費用が発生します。受験にかかる費用が非常に高額なため、受験者の気迫は鬼気迫るものがあります。
これらの理由により、建築設備士試験を「記念受験」で受けに来たような受験者は非常に少ないと思われますので、受験者のレベルはとても高いものと推測されます。合格率が3割だからといって油断していると、簡単に足元をすくわれます。難関資格だと考えて、真剣に覚悟を持って勉強しなければ合格できない資格と言えるでしょう。
試験の難易度について、体感的には、電気工事士や施工管理技士に比べると難しく、電験三種と比べるとやや簡単で、エネルギー管理士と同じくらいかなといった印象です。(電気分野以外の方には伝わらなくてすみません)
合格に必要な勉強時間について
一次試験の合格までに必要な勉強時間は、おおよそ300時間(過去問7年分を8周程周回する想定)は必要であると思われます。参考に、私自身の勉強時間は平日に平均し1時間程度、休日に4時間程度、その期間が約5カ月程度でしたので、約300時間程度勉強しました。
ちなみに、二次試験の私自身の勉強時間は平日に1時間程度、休日に5時間程度、その期間約2カ月程度で、休日や祝日が多かったこともあり約120時間程度は勉強しました。(これについては別途記事を書きたいと思っています)
建築設備士一次試験を合格するための勉強方法について
おすすめの勉強法は、なんといっても過去問問題集の勉強です。王道の方法ですが、このやり方が一番効率的だと考えます。
私は7年分の過去問を勉強して令和6年度の一次試験に臨みましたが、全105問中96点(ちなみに令和6年度の合格基準点は72点)を取得できました。正直、試験を受けてみてあまり手応えを感じず、「多分7割は得点できているだろうな」という感覚でしたが、実際には91%を超える得点率でした。
実際の試験において、過去問とまったく同じ問題はそう多くは出題されませんが、過去問の選択肢の中身を少しだけ変化させた問題(例えば、過去の出題では「~がある」となっていたところを「~がない」と反対にしていたり、数値を変えていたり等)が多い印象です。
しかし、これだけだと当然合格率が上がりすぎてしまいますので、新問題も多数出題されます。体感的には全選択肢の2割程度が過去問を勉強していても見たことが無いような問題でした。しかし、裏を返せば8割の選択肢は過去問を勉強していれば分かりますので、知らない問題があったとしても消去法である程度正答を導くことが可能です。新問題の2割を得点したいがために、過去問の勉強よりも参考書等の勉強を優先するのはあまり効率の良い勉強方法とは言えません。
つまり、私の経験上、最低でも7年分の過去問をしっかり勉強すれば、新問題が分からなかったとしても、過去問だけで合格基準点の7割以上の得点が可能であると考えます。
過去問勉強のコツ① 正答以外の選択肢も勉強する
過去問を勉強する際は、問題の正答だけを理解するのではなく、必ずその他の選択肢も含めて理解するようにしてください。実際の試験問題はこの「過去問で正答の選択肢(つまり、誤っている文章を選ぶ問題において誤っている選択肢)」からではなく、「不正解の選択肢(誤っている文章を選ぶ問題において正しい選択肢)」の部分からの出題が多いです。そのため、過去問の正答だけを覚えても得点アップにはあまり結びつきません。
過去問勉強のコツ② 問題集の解説を理解する
過去問を勉強する際は過去問問題集の解説も理解するようにしてください。例えば、「特殊継手排水システムを採用したので、排水立て管には、オフセットを設けなかった」という問題の場合、「特殊継手排水システム」や「排水立て管」、「オフセット」という単語の意味が分からなければ、過去問問題集の解説を読んで理解するようにしましょう。解説に載っていなければ、インターネットでGoogle先生に聞いてみましょう。大体なんでも教えてくれます。
過去問勉強のコツ③ わからなければ潔く飛ばす
分からない単語があったり、解説が理解できない状態のまま勉強を進めていくのはあまりおすすめできませんが、理解することにフォーカスし過ぎて時間が掛かりすぎたり、難しすぎて勉強のやる気を削がれたりすることは絶対に避けなければなりません。内容がわからな過ぎてチンプンカンプンという場合は、理解することを潔く諦めて一旦スルーしましょう。この度一度スルーしたとしても、何周か過去問を周回するうちに、突然に理解できるようになることも往々にしてあります。
過去問勉強のコツ④ 関連する情報も一緒に暗記する
また、出題に関連する内容も記憶するようにしましょう。例えば、「C種の接地抵抗地が10Ω以下」という問題が出題されたのであれば、合わせて「A種10Ω以下、D種100Ω以下」という情報も覚えるようにする等、選択肢にかかわる内容だけでなく、関連する情報も合わせて記憶するようにしましょう。大体の過去問問題集の解説には、このような関連する情報も整理されているはずです。実際の試験では、このように過去問の出題から関連する内容が良く出題されます。
過去問勉強のコツ⑤ 何度も過去問を周回する
これが非常に重要です。人間は忘れる生き物です。どんなに頑張って勉強しても、何度も復習しなければ確実に忘れます。
過去問の周回ペースは早ければ早いほど、多ければ多いほど良いですが、どんなに遅くとも1週の周回スピードは2週間程度とした方が良いと思います。まずは2週間で1週できるように、勉強範囲を調整することが必要です。
例えば、まずは「建築一般」科目の「7年分の過去問勉強を2週間で1周する」という目標を立ててある程度記憶が定着するまで繰り返し、次に「法規」科目の「7年分の過去問勉強を2週間で1周する」という目標と勉強の繰り返し、次に「建築設備」科目の「7年分の過去問勉強を2週間で1周する」という目標と勉強の繰り返し、次に「7年分の過去問を2週間で1周する」、最後に「7年分の過去問を1週間で1周する」とする等、とにかく記憶が定着するまで何度も何度も繰り返すことが重要です。繰り返しの期間と範囲は、自分の力量に応じて修正しましょう。
過去問勉強のコツ⑥ 覚えたことをアウトプットする
記憶の定着のためにはアウトプットが非常に重要です。過去問問題集をただひたすらに読み込むだけでは、なかなか記憶が定着しません。
過去問の答えを見ずに回答したり、自分だけの穴埋め暗記カードを作成して勉強したりするなど、アウトプットを意識した勉強が記憶の定着のためにはとても重要です。
過去問勉強のコツ⑦ 間違えた問題はメモする
間違えた問題は、次同じ問題を解いた際も同様に間違える可能性が高いです。間違えた個所は必ずメモするようにしましょう。間違えたページに小さな付箋を付けてもいいですし、自分だけのまとめノートに間違った個所をメモしてもいいです。(私の過去問問題集は付箋だらけでしたので、これを見た家族や友人から笑われてしまいました)
最終的に、記憶が確実に定着した過去問は周回ループから外すようにして、間違えた問題や記憶に自信がないような問題のみを厳選して周回するようにすると、とても効率的に高得点を狙うための勉強が可能となります。
いかがでしたでしょうか。建築設備士の試験難易度はかなり高いですが、勉強を頑張れば頑張っただけ得点に結びつく勉強しがいのある資格試験と言えます。(低合格率の運が悪いハズレ年の電験三種試験や、電験二種二次試験のような、たくさん勉強しても点数が取れないというような理不尽な感じは少ないです)
頑張って勉強すれば合格できる資格ですので、受験する方は頑張りましょう。