目次
過去問を何年分勉強すれば合格できるのか検証【法規】
電験三種に合格するためには「過去問の勉強が最重要である!」とよく言われていますが、私自身もそのとおりだと思います。
では、具体的に、何年分の過去問を勉強すれば合格を勝ち取ることができるか、【法規】科目について、検証してみたいと思います。
検証にあたり、令和2年~平成12年までの、合計21年分の過去問を分析します。この間に同様の問題の出題が無い場合、「R2~H12まで出題なし」と表現させていただきます。
法規(令和3年度) 問1


空欄(ア):「電気事業法57条」からの出題です。”平成19年問1”にて類題が出題されていますが、現在は57条の条文が改正されており、”電線路維持運用者”はR2~H12まで出題がありません。
空欄(イ):「電気事業法57条」からの出題です。”平成19年問1”にて類題が出題されています。
空欄(ウ):「電気事業法57条」からの出題です。”平成19年問1”にて類題が出題されています。
空欄(エ):「電技解釈14条」からの出題です。意外なことに、R2~H12まで出題がありませんでした。しかし、平成26年問6(電技58条)を解いていれば、「一般的なコンセント回路は100Vであり、その絶縁抵抗値が0.1MΩということは、オームの法則より、漏れ電流は1mAなのだから、低圧屋内電路の漏えい電流は1mmA以下でないとダメなのでは?」と推測できれば答えを導けます。
結論:平成19年問1の過去問を解いていれば、(1)と(4)の2択まで答えを絞ることができます。
回答:(4)
法規(令和3年度) 問2

「電気工事業の業務の適正化に関する法律」については、”平成26年問4”に類題があります。
(1)「電気工事業の業務の適正化に関する法律3条1項」より、電気事業法に規定する電気工事を行う事業であって、その事業を営もうとする者は、経済産業大臣の事業「許可」ではなく「登録」を受けなければなりません。
(2)「電気工事業の業務の適正化に関する法律3条2項」のとおり。
(3)「電気工事業の業務の適正化に関する法律24条」のとおり。
(4)「電気工事業の業務の適正化に関する法律25条」のとおり。
(5)「電気工事業の業務の適正化に関する法律26条」のとおり。
結論:平成26年問4の過去問を解いていれば、この問題を解くことができます。
許可も登録も似たような意味なので、なかなか難しい問題だと思います。なお、参考に、小売電気事業を営もうとする者も、経済産業大臣の「登録」が必要です。
一方で、一般送配電事業を営もうとする者は、経済産業大臣の 「許可」を受けなければなりません。電気主任技術者の選任についても経済産業大臣の「許可」が必要です。
回答:(1)
法規(令和3年度) 問3

「電気設備に関する技術基準を定める省令(以下、電技)27条の2」からの出題であり、”平成27年問3”に類題があります。
(ア)、(イ)、(ウ)については、平成27年問3を勉強していれば回答できます。
この時点で正解は(4)だと分かりますが、(エ)については令和2年問4を勉強していれば回答することが可能です。
結論:平成27年問3の過去問を解いていれば、この問題を解くことができます。
回答:(4)
法規(令和3年度) 問4

「電気設備技術基準の解釈(以下、電技解釈)37条」からの出題であり、”平成27年問4”に類題があります。
(1)、(2)については、平成27年問4を勉強していれば、(1)は正しい、(2)は間違いだと分かります。
なお、(3)、(4)、(5)については、平成22年問5に類題がありますので、これを勉強していれば、(3)~(5)は正しいと分かります。
結論:平成27年問4の過去問を解いていれば、この問題を解くことができます。
回答:(2)
法規(令和3年度) 問5

「電技解釈42条」からの出題であり、”平成20年問10”に類題があります。空欄に当てはめる語句までほぼ同じです。
結論:平成20年問10の過去問を解いていれば、この問題を解くことができます。
回答:(3)
法規(令和3年度) 問6

「電技解釈70条」からの出題であり、”平成24年問8”に類題があります。
(ア)、(イ)、(エ)は平成24年問8が解ければ回答できます。この時点で正解は(2)であると確定します。ちなみに、平成19年問8も類題であり、これが解ければ(ア)~(エ)まで全て回答できます。
結論:平成24年問8の過去問を解いていれば、この問題を解くことができます。
回答:(2)
法規(令和3年度) 問7

「電技68条、69条」からの出題であり、”平成16年問5”に類題があります。
(イ)、(ウ)は平成16年問5が解ければ回答できます。この時点で正解は(5)であると確定します。(ア)はR2~H12まで出題がありませんが、文脈的に勘で「感電」を当てることができそうです。補足ですが、電技には「感電又は火災」というワードが頻出(約20か所)します。
結論:平成16年問5の過去問を解いていれば、この問題を解くことができます。
とは言うものの、この問題は文脈から勘で当てることができそうな問題です。(イ)は「点火源」と来れば「引火性物質」が入りそうですし、(ウ)は「保存し、又は貯蔵する」が仮に正解ならば、「頭痛が痛い」みたいな同じ意味の言葉が2回続くため、「保存」は不適だから「製造が」正解と判断できます。
回答:(5)
法規(令和3年度) 問8

「電技解釈143条」からの出題であり、”平成25年問8”に少し似ている問題が出題されています。
平成25年問8が解ければ(1)、(5)は正しいと判断できますが、残りの(2)~(4)は正誤の判断ができません。かなり難易度が高い問題だと思います。
しかし、(2)の「400V」に猛烈な違和感があります。村人のふりをする人狼のように感じてしまいます。気になって調べましたが、電技解釈の中に「150V」は38カ所、「300V」は138カ所、「450V」は6カ所ありましたが、「400V」は1カ所もありませんでした。
結論:R2~H12まで類題の出題が無く、過去問の学習では解けません。
回答:(2)
法規(令和3年度) 問9

「電技解釈226条、228条」からの出題であり、”令和元年問9”に少し似ている問題が出題されています。補足ですが、電技解釈220~229条あたりの「分散型電源」に関する問題は超頻出であり、特に平成29年からは毎年出題されています。そのため、「分散型電源」は絶対勉強しておいた方が良いです。
(ア)、(イ)は令和元年問9が解ければ回答できます。しかし、(ウ)、(エ)については、意外なことにR2~H12まで出題がありませんでした。
ですが、(ウ)については、「逆充電」の用語の意味を知っていれば回答できそうです。つまり、平成29年問9に「逆充電」が出てきますので、これを勉強していれば回答できるかもしれません。
b)の文章ですが、仮に「逆充電」を当てはめてみると、「逆変換装置を用いれば逆充電してもよい」と読み取れてしまうため、間違いであると分かります。(ア)、(イ)、(ウ)が分かれば、答えは一つに絞ることができます。
結論:令和元年問9の過去問を解いていれば、(1)と(3)の2択まで答えを絞ることができます。
回答:(1)
法規(令和3年度) 問10


過去問では見たことがない、めずらしいタイプの出題です。一見すると図があって複雑そうで難しそうですが、よくよく見ると実は簡単で、超サービス問題です。事故除去の極小化(つまり、停電範囲の極小化)が必要であり、基本的には事故箇所の直近上位の遮断器や開閉器を開放する必要がありますが、このことを知っていれば解くことができます。
結論:R2~H12まで類題の出題が無く、過去問の学習では解けません。
回答:(1)
法規(令和3年度) 問11


支線に生じる引張荷重(a)と支線の必要条数(b)を求める問題です。
(a)は”令和元年問11”、”平成27年問11(a)”に類題があります。
(b)は”平成22年問12(b)”に類題があります。
この問題は電験というよりかは、基本的な数学・物理の知識があれば回答できます。支線の安全率も問題文に指定されており、電気の知識ゼロでも解けます。こういう問題は確実に完答したいところです。
結論:(a)は令和元年問11の過去問を解いていれば、この問題を解くことができます。(b)は平成22年問12(b)の過去問を解いていれば、この問題を解くことができます。
回答:(a) ⇒(4)、(b) ⇒(3)
法規(令和3年度) 問12


(a)は「電技解釈15条」からの出題であり、”令和2年問3”に類題があります。”平成28年問12”、”平成24年問11”も絶縁耐力試験に関する問題であり、出題頻度高めです。
(b)は絶縁耐力試験に必要な変圧器容量を求める問題であり、こちらも同様に”平成28年問12(a)”、”平成24年問11(b)”に類題があります。
(a)はについてですが、問題を見た瞬間に、答えが(2)か(4)だろうと推測できます。なぜなら、「絶縁耐力試験」ときたら「10分」が鉄板回答だからです。少なくと、電験三種の問題で「1分」が答えの問題を私は見たことがありません。(しかし、電験二種 令和2年度 法規問6では、「1分」が答えの問題が出題されていますので、10分が鉄板回答なのは電験3種までです)
(b)について、一見難しそうですが、実際に解いて見てもやっぱり難しいという、難易度高めの問題です。この問題が初見であれば、多分解けないと思います。
結論:(a)は令和2年問3の過去問を解いていれば、この問題を解くことができます。(b)は平成28年問12(a)の過去問を解いていれば、この問題を解くことができます。
回答:(a) ⇒(4)、(b) ⇒(4)
法規(令和3年度) 問13
需要率、不等率、負荷率に関する問題です。類題は”平成26年問12”、”平成23年問12”、”平成20年問12”、”平成19年問13”等に出題されており、近年はやや主題頻度が落ちていますが、それでも未だに出題頻度は高いです。
問題によって、需要率を問われたり、不等率を問われたり、負荷率を問われたりと変化するため、どんな問題が出てきても対応できるように、需要率、不等率、負荷率の定義については、しっかりと暗記した方がいいです。
結論:(a)、(b)は平成26年問12の過去問を解き、「需要率」、「不等率」、「負荷率」の定義について勉強していれば、この問題を解くことができます。
回答:(a) ⇒(2)、(b) ⇒(4)
過去問を何年分勉強すれば合格できるのか【結論】
平成22年までの過去問(11年分)を学習すれば、64点(合格ライン60点)を取得することが可能です。
しかし、これは勘で正解できる問題を除いて計算しましたので、実際にはもっと高得点が取れるはずです。
問題 | 過去問類題 | 得点(H22年~) |
問1 | なし | |
問2 | 平成26年問4 | 6 |
問3 | 平成27年問3 | 6 |
問4 | 平成27年問4 | 6 |
問5 | 平成20年問10 | |
問6 | 平成24年問8 | 6 |
問7 | 平成16年問5 | |
問8 | なし | |
問9 | なし | |
問10 | なし | |
問11(a) | 令和元年問11 | 6 |
問11(b) | 平成22年問12(b) | 7 |
問12(a) | 令和2年問3 | 6 |
問12(b) | 平成28年問12(a) | 7 |
問13(a) | 平成26年問12 | 7 |
問13(b) | 平成26年問12 | 7 |
合計 | 64点 |
この表を見ていただくと分かると思いますが、電験三種の法規は、計算問題に注力して勉強した方が圧倒的に効率がいいです。
計算問題は数学的にそこまで難しくなく、比較的簡単です。過去問をこなせば確実に得点することができます。
一方、文章問題は試験範囲がとても広く、過去問だけでは対策ができません。とは言うものの、参考書や電技・電技解釈等を丸暗記するのは現実的ではありません。人間、そんなに記憶できません。
以上より、過去問は最低10年分、その中でも計算問題は力を入れて勉強した方がいいと思います。
参考になりましたでしょうか。ご質問やコメント等お待ちしております。
